賃貸経営は節税余地が大きいことにうまみがあった。やり方次第で家賃収入にかかる所得税を減らし、将来の相続税も抑えられる。
しかし、「賃貸アパート経営」「マンション投資」といった名で富裕層の間で用いられてきた節税策が封じられる見通しだ。
①税制改正によって賃貸住宅の建築費・購入費における「金地金を使った消費税の還付スキーム」が封じ込まれる。賃貸住宅建物取得については仕入れ税額控除の適用は認めないとしている。
②賃貸不動産は現預金などで相続するよりも税額が少なくなる例が多い。そこで、80代、90代の高齢者による「駆け込み節税」が多かったが、税務署が税務調査で評価減を否認する例が目立ってきた。直後に相続が起きた場合、節税以外に理由が見いだせなければ税務署は否認しやすい。
③不動産所得は家賃収入から必要経費を差し引いて計算し、経費が大きいと所得税・住民税が減る。そこで自分や家族を役員として不動産管理会社を設立して、その管理会社に払う管理料を必要以上に高くするという手法が使われていた。しかし、税務署は不要な経費算入を厳しくチェックし、修正申告を求める例が増えている。
(令和2年2月29日 日本経済新聞より抜粋)
相続手続カウンセラー協会より一言
少し前に、金を活用した消費税の還付を狙う節税スキームが大流行していました。税金対策に敏感な人たちの間では話題になり、「また出たか、一時的な節税策だな。どうせそのうち封じられるだろう」と思っていたのですが、案の定、その通りの展開になりました。国税当局も見逃すわけがなく、結局この手法は規制の対象となり、使えなくなってしまったのです。
とはいえ、意外にもこの方法が使えた期間は思ったより長かったように感じます。しかし、近年の税務当局のスタンスを見ていると、過度な節税策に対する目がどんどん厳しくなっているのがわかります。昔なら「グレーゾーン」として扱われていたものも、今でははっきりと「黒」と判断されるケースが増えてきました。そのため、短期的に得をすることだけを考えた節税策は、もはやリスクが大きく、長期的に見るとマイナスになる可能性すらあります。
やはり、節税は一発勝負の裏技のようなものではなく、時間をかけてじっくりと取り組むものなのでしょう。目先の利益にとらわれず、しっかりと腰を据えて、法に則った確実な方法で進めることが大切です。結局のところ、誰もが驚くような「ウルトラC」の節税策なんて存在しないのですから。