相続相談事例集:退職金の中身

Aさんはある上場企業にお勤めでしたが、勤務中に不慮の事故で亡くなりました。
相続人は奥さまとお子さん2人。

奥さまは初めての相続で何をしたらよいか分からないご様子で、将来のこと、相続税のことでとても悩まれていました。

最初は税務署に行って相談されたようですが、税務署の職員さんの話を聞いても、難しくてあまり親身に教えてもらえなかったようです。

こちらに相談に来られた際に、「相続財産は、自宅2,500万円、預貯金2,000万円、退職金3,500万円、合計8,000万円で相続税がかかると思います」とおっしゃっていました。

詳しくお調べすると、3,500万円とおっしゃった退職金のうち、1,500万円は会社が従業員のためにかけていた生命保険金、1,000万円が死亡退職金、1,000万円が弔慰金であることが分かりました。

通常、「契約者」「被保険者」「受取人」が違う死亡保険金は、贈与税の対象になりますが、企業が「契約者」、従業員が「被保険者」、妻などの家族が「受取人」といった法人契約の場合は、例外的に、死亡した従業員(被保険者)が保険料を負担していたものみなされ、保険金を受取った法定相続人に相続税がかかります(相続税法基本通達3-17)。

ただし、「500万円×法定相続人の数」まで非課税となるため、Aさんの場合は相続人が3名で、ちょうど非課税の範囲内でした。

死亡退職金についても、相続税法上の「みなし相続財産」にあたりますが、こちらも「500万円×法定相続人の数」まで非課税となりました。

弔慰金については、「被相続人の死亡が業務上の死亡である時、被相続人の死亡当時の賞与以外の普通給与の3年分に相当する金額までは非課税」となりますので、この場合も非課税の範囲内でした。

これにより、相続税の対象が自宅と預貯金の4,500万円だけになったため、基礎控除枠内におさまり、相続税の申告が要らないことになりました。

会社から死亡退職金が支給される場合、どのような内容かを確認することは非常に大切です。