銀行の担当者から「お客様を紹介したい」との一報が入りました。
銀行の応接室でお話を伺ったところ「妹(京子さん)が亡くなりました。夫が既に亡くなっており、子供もいないため、自分たち兄弟8人が相続をすることになったものの、亡き妹は京都、他の兄弟姉妹は九州・大阪・東京に住んでいるため、書類収集が大変なので、手続きをお願いします。京都の家は誰も住む者がいないので、売却を考えています」とのことでした。
そこで、京子さんのご自宅の謄本を取得してみると、建物が未登記でした。遺産分割協議書には「同地上の未登記の建物」と書くことで相続はできたとしても、相続登記をするためにはやはり建物の表示登記が必要です。
司法書士と相談した結果、2つの問題があることがわかりました。
①建物の表示登記のために、図面を作成しなければならないこと
②区役所の固定資産税課に行って、未登記建物の所有者の名前を、京子さんの
ご主人から、京子さんに変更しなければならないこと
いずれも費用と時間がかかるだけでなく、何よりも当事者本人が既に死亡しているため、手続きが相当難航することが予想されました。
8人の相続人と連絡を取りながら、役所の担当者と交渉を重ねた結果、4月1日の新しい年度の固定資産評価証明書から未登記建物の所有者名を、ご主人(故人)から京子さん(故人)に変更してもらうことができました。
そして、新しい年度の固定資産評価証明書に記載されている京子さんの名前と、遺産分割協議書によって相続登記をすることができました。
Check!
固定資産税は現況で判断するため、市町村の自治体職員が現地調査で建物を発見した時点で課税されるのが一般的です。
建物が未登記でも、固定資産税が課税されるため、未登記であることに気付いていないケースがあります。
毎年春に役所から送られてくる固定資産税の納税通知書を確認して、「未登記」と記載されている場合や、家屋番号が空欄になっている場合は要注意です。建物の表示登記は土地家屋調査士、建物の所有権保存登記は司法書士が専門分野となります。