相続相談事例集:離婚してくれなかった妻

Aさんにはフィリピン国籍の配偶者Bさん、前妻との間の子Cさん、AさんとBさんの子Dさんがいます。Bさんは、10年ほど前から、本国と日本を行ったり来たり。日本語もあまり通じず、ここ数年はほとんどDさんを連れて、本国に帰ったままでした。
AさんはCさんと同居していましたが、Aさんが突然倒れ、何も告げずに亡くなってしまいました。

生前、Aさんは司法書士事務所で債務整理(過払い請求)の手続きをしており、過払い還付金は200万円近くにもなっていましたが、決定事項ではなく、申請中のものがほとんどでした。過払い金を受けとれるのはその相続人となりますが、市税などの滞納金が100万円近くあり、その他の債務もチラホラありました。

BさんとDさんについては、たまに連絡があったものの、こちらからは居場所も連絡手段も分からない状況でしたので、遺産分割協議の長期化を避けて、Cさんは相続放棄を選択しました。

Aさんは生前、Bさんに対して離婚話を持ちかけていたのですが、取り合ってもらえなかったようです。また、Bさんは最近、年金の手続きをするため来日していたという噂も聞かれました。

国際結婚ではこのようなケースが少なくありません。圧倒的な債務超過であれば放棄という選択肢で問題ないと思いますが、相続する場合は、連絡が取れなければ手続きが滞ったり、長引いたりする場合が多いので注意が必要です。

Check!

相続には日本の法律が適用されます。相続人の国籍は関係ないため、外国人妻は帰化していなくても、日本人妻と全く同様に相続できます。

【不在者財産管理人】

事例では債務があったため、他の相続人は相続放棄をしましたが、相当額の遺産がある場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人の申立て」を行うという手段があります。

不在者財産管理人が選任されると、不在者が現れたときにはその遺産を不在者に渡します。不在者について失踪宣告がされたときや、不在者が死亡したことが確認されたときは、その不在者の相続人に、遺産を引き継ぐことになります。