奥様から、「病床の夫が遺言書の作成を希望しています」とのご相談をいただきました。余命告知を受けて、自筆で書くほどの体力もなく、困っているとのお話でした。
ご相談に伺うと、ご主人は心配そうな表情で「このままでは相続で揉め事が起きそうだ」とおっしゃっていました。
さっそく公証人に相談し、病床での公正証書遺言作成の段取りを始めました。
遺言書作成の過程では、少しずつですがご主人の表情が晴れやかになってゆくのを感じました。心なしかお元気になられたような印象も受けました。
しかしながら、遺言書作成から2ヵ月ほど経ったある日、奥様から「昨日、夫が亡くなりました」とのご報告を受けました。
遺言を残せたことで安心されたのか、安らかな表情で眠るように亡くなったとの感謝のお電話でもありました。
「遺言書の作成は、必要と思いつつもきっかけがないために、なかなか踏み出せない」という方が多く、切羽詰まった状態になって初めて相談に来られるケースをよくお見受けします。病床での遺言作成はもちろん可能ですが、容態によっては間に合わないこともあります。愛するご家族のためにもゆとりを持って遺言の作成に取り掛かっていただきたいと思います。
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【病院で公正証書遺言を作成するポイント】
現在、新型コロナウイルス感染症の予防に伴い、病院や高齢者施設での面会が制限されているケースも多いですが、公証人に出張してもらう際のポイントをご紹介します。
<手続きの流れ>
1.公証役場に連絡(事前相談の予約)
2.事前相談(必要書類を用意、遺言書の文案や段取りを決める)
※電話・FAX・メールのやりとりも可能。本人ができない場合は家族等が相談。
3.
①当日、出張先において、公証人は遺言者の意思能力の判断を行う
(遺言書の内容を理解しているか?会話ができるか?署名できるか?)
②公証人が判断できない時は、医師の「診断書」が必要となる
③意思能力に問題なければ、証人2名が立会いのもとで、遺言書作成
<注意点>
出張先の管轄に所属する公証人に依頼しなければならない
<手数料>
1.公正証書作成の手数料は、基本手数料(遺言加算を除いた目的価額)の1.5倍
2.公証人の日当(4時間まで/1万円:1日/2万円、税別)
3.交通費(実費)