相続相談事例集:相続人がDV被害者

奥さんと幼いお子さん2人を残して亡くなられた男性のお姉さんが相談に来られました。

話を聞くと、その弟さんは生前、奥さんに暴力を奮うDV加害者で、弟さんが亡くなる数ヶ月前に、奥さんは子ども達を連れて家を飛び出したまま居場所が分からない状態でした。そして、葬儀後数日経ってから「財産は一切放棄しますので、もう関わらないでください。勝手にしてください」という連絡があったとのことです。

弟さんの財産は僅かな預貯金、数年前から使っていない借地権付の古い建物(飲食店舗)、そして保険だけでした。家を飛び出した奥さんとその子ども達の今後の生活のためにも、何とか相続の手続きをしてほしいというお姉さんの願いを受けて、手続きを開始することになりました。

まず奥さんと子ども達が相続放棄の申し立てをしているのかの確認をするために家庭裁判所に行ったところ、きちんと申し立てを済ませて既に受理されていました。

結局、相続人はお姉さん1人だけということで、預貯金と建物の手続きを進めることにしましたが、問題は2つの保険でした。

1つは、死亡保険金の受取人が子ども達である生命保険。もう1つは、育英年金付こども保険。いずれも受取人が未成年者であるため、法定代理人の母親、つまりDVを受けていた奥さんが請求者として手続きを行わなければならなかったのです。

そこで「今後の生活のためにも、何とか手続きをしてほしい」というお姉さんの願いを届けるために、奥さんに会いに行きました。しかし、そこはシェルターと呼ばれる「駆け込み寺」のような施設で、事情を説明するも、奥さんや子どもたちの情報を一切教えてもらえず、諦めるしかありませんでした。何度訪問しても、担当者からは「一切何も教えることはできません!」の一点張り。

現在も、2通の保険証書を大切に保管されているお姉さんの姿が思い出されます。

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【DV等支援措置】
配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限することができます。

また、支援措置を受けている旨の証明書(「住民基本台帳事務における支援措置実施決定通知書」)を提示すれば、法務局・年金事務所・福祉事務所などにおいても、住所等が他者に知られることのないよう配慮のもと、手続きを行うことができます。