相続に関わる士業の方の中には、自分の専門分野ではないご相談も多かったりすると思います。
そんな時にはネットで調べたり、本を探したりすると思いますが、その場ですぐに答えを求められと困ってしまうこともありますよね。
お客様が実際にどんなことで悩み、ご相談に来られるのかはその時ではないとわからなかったりしますよね。
ここでは、相続を専門としている、司法書士、行政書士、税理士が、自分の専門分野以外だったために、知らなかった事例を紹介していきます。
今回も同じように、士業の方の中には知らない人がいるかもしれません。
相続手続きカウンセラーでは、士業の方の皆さんに、お客様へ正しい相続の知識をしっかり得ていただく為に、相続の知識を提供し、事例解説なども行なっています。
相続による農地の登記について
今回の事例は、農地を相続することになった場合です。
父が亡くなったAさん(母は10年前に他界)。Aさんには妹が2人いますが、2人とも結婚しており、嫁ぎ先のご両親と同居しています。
長男で独身、両親と同居していたAさんが、実家の土地建物と、農業を営んでいた父が所有する農地を相続することになりました。
兄妹3人で話合った結果、遺産分割協議も整い、相続登記をすることになりました。
この場合に、実家の土地(宅地)建物は、相続登記が通常でできるのはわかるのですが、農地の登記の場合は事情が異なってしまうのではないか?と考えがちです。
この場合で、勘違いしてしまいそうなのは、農地法第3条の「許可」です。
【農地法第3条の許可とは?】
相続の場合は、売買や賃貸借などの使用収益権を設定するわけではないので、農地法第3条の許可は必要なく、そのまま相続が可能です。
相続の場合は不要ですが、売却などを考えたりしている場合は、農地法第3条の許可が必要となります。
農地法第3条の許可が定められている理由とは?
農地を他人に売買などして名義を書き換えには、普通の土地と違って、農地法第3条の「許可」が必要となります。
これは、農地を自由に手放せてしまうと、農業を安易にやめてしまう人が増えてしまい、日本の自給率が下がってしまうからです。
相続では農地法第3条の許可が必要ではない理由
相続は、一般の売買や賃借などのように権利の設定や、移転の為の法律行為ではないことから、農地法第3条の許可の対象にはなりません。
ただし
相続登記した後は、農業委員会への届出が必要になっているのでご注意ください
農地法の改正(平成21年12月15日施行)により、相続や時効取得で農地の権利を取得する際には、農業委員会への届出、(誰が農地を継承したのか?など)が必要となりました。
農地の相続による農業委員会への届出は、相続発生から10ヶ月い以内に行わなければいけません。
また、届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合は、10万以下の過料に処せられるので注意が必要です。